ヴィジュアル系に支えられた思春期

 私は人並みに音楽鑑賞が好き。

10代の頃は音楽番組を欠かさずチェックして、J-POPをたくさん聴いていた。

流行の曲もそれなりに好きだったけど、それよりも大きな熱量で、ヴィジュアル系バンドにハマっていた。








きっかけは小5のある秋の日。ラジオから流れてきたのはX JAPANの『Rusty Nail』。イントロの音色があまりに神秘的で衝撃を受け、その一瞬で、「誰の曲かは分からないけど、これ絶対いい曲!!」と確信した。バンドが解散を発表して間もない時期だった。

その年のミュージックステーション年末スペシャルでは、X JAPANが解散前の最後の出演を果たし、『紅』と『Forever Love』を披露した。とても格好良かった。

私は自分の誕生日に、親にねだってX JAPANのアルバムを買ってもらった。


X JAPAN解散後、各メンバーのソロ活動をチェックするようになる。解散後、すぐに始動したのはHIDE。色々な音楽番組で新曲『ROCKET DIVE』を披露し、インタビューではX JAPANの話やHIDEを取り巻く世界の色々な話をしてくれた。何もかもが新鮮でキラキラ輝いていて憧れた。HIDEの出るテレビやラジオ、雑誌などをチェックするようになった。

そんな矢先、HIDEは死んでしまった。信じられない衝撃だった。寝て起きてもそれが変わらない現実ということに、打ちのめされた。ちょうど大型連休の時期で、テレビではワイドショーを中心に、連日にわたり大々的に報道していた。学校などの至る所で、HIDEのことを大して知りもしない人々が、興味本位でこれを話題の種にして適当なことを言っているのが許せなかった。

HIDEはLUNA SEAのベーシストJと仲が良かった。当時発売していた雑誌には、HIDEとJの対談が載っていた。私はLUSA SEAも好きだった。バンドの音楽とビジュアルから醸し出される世界観が神秘的で刺激的だった。Jのことはよく知らなかった。音楽番組などでしゃべる場面はなかったし、格好良いけど雰囲気的に怖そうな人だなと思った。



その年の年末、hideの遺志を引き継いだチャリティーイベントhide Seva [C-Aid]のライブの様子がテレビで放送された。hide with Spread Beaverのバンドメンバーや、PATA、HEATHなどのほか、LUNA SEAやGLAYも出演し、hideの楽曲をカバーした。そこに出演していたJがこれまでのイメージとは打って変わって、笑顔で生き生きとライブを盛り上げていて、それがまた恰好良かった。恋に落ちた。これがきっかけで私は一時期Jのファンクラブ『F.C.Pyro.』にも入っていた。

当時、X JAPANやLUNA SEAといった大物バンドだけでなく、他にも神秘的な世界観を持ったバンドがたくさん出てきていた。当時はいわゆるヴィジュアル系バンドの全盛期だった。綺麗なメロディーと激しいサウンド、非現実的で切なくて神秘的な、そんな世界に自分も入りたいと思っていた。ヴィジュアル系バンドの音楽はそんな世界に通じているように思えた。


SHAZNA。当時ヒットしていた『Melty Love』や『Sweet Heart Memory』を聴くと今も、あの頃の未知の世界にワクワクしていた気持ちがよみがえる。

PENICILLIN。『ロマンス』のメロディーと歌詞と歌声のインパクトが本当にたまらなかった。

MALICE MIZER。神秘的な世界観といったらNO.1の完成度。『月下の夜想曲』は懐かしいよ
うな切ないような、何度聴いても飽きない楽曲だったし、アルバム『merveilles』は芸術的だと思った。

Laputa。曲のメロディーがどれも綺麗で、歌声が楽器のように音楽に馴染んでいて、歌詞の言葉のチョイスも絶妙でとっても好き。私に神秘的な世界観を夢見させてくれる幻想的で懐かしいような不思議な曲がたくさんある。

La'cryma Christi。私はダークな方が好みだったので、ラクリマはちょっと爽やかな印象だったけど、『Lasha』はとても好き。

Pierrot。独特な旋律と詞と歌声で奏でられる音楽の振れ幅がすごい。幻想的だったりアングラな感じだったり。

Dir en grey。私はこのバンドのファンだった。バンド雑誌によく載っていたことで存在を知り、その後発売された『-I'll-』という曲がとても幻想的で綺麗で、しかもメジャーデビューしていないにも関わらずこの曲が売れてたし、武道館ライブも成功させて、すごいバンドだと思っていた。翌年、YOSHIKIプロデュースでメジャーデビューしかも3枚同時リリース、ということが決定し、ますます応援したくなった。ちなみに今もShinyaさんのYouTubeは楽しく見ています。

Janne Da Arc。歌声と楽曲がどれも素敵なのはもちろんだけど、ヴィジュアル系というよりも等身大の気さくなお兄ちゃんたちって感じで、格好良いけど関西人っぽいノリとか、メンバーの仲の良さそうな雰囲気も素敵で好きだった。

ここに書いたバンドはほんの一例で、語り始めるときりがないのだけど。。

10代の私、いわゆる中二病だった。

そして思春期の不安定な感情とか、誰にも理解してもらえない孤独な思いとか、そういったものを理解して受け止めてくれたのがヴィジュアル系バンドの音楽だったと思う。本当に熱狂して、その世界に憧れて夢見て、、って感じだった。

ヴィジュアル系とは違うけど、思春期の若者が尾崎豊の曲に惹かれるのにも似ている。実際私も惹かれたし。あとは黒夢の音楽も当時の私を理解して救ってくれたと思う。

今はあの頃ほど自己投影して音楽を聴いてはいないけど、今でもたまに音楽を聴いたりライブ映像を観たりしている。当時の音楽を聴くとあの頃の高揚感がいつでも戻ってくる。なんというか体に刻み込まれている。


私の思春期を受け止めてくれて、彩ってくれてありがとう。

今はヴィジュアル系バンド好きの片鱗も見せずに何食わぬ顔で街を歩いているけど、本当に大好きで私の支えだった。ヴィジュアル系バンドの音楽が、今の私につながっている。



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